「じゃあ僕、バーリマンさんとお勉強してくるね」
「うむ。しっかりと学んでくるのじゃぞ」
これからお水を汲む魔道具の作り方を教えてもらうんだけど、それにはバーリマンさんがいればいいんだって。
だからロルフさんとお爺さん司祭様は邪魔になっちゃダメだからって、僕たちがお勉強してる間二人してお店の番をして待っててくれるって言うんだよ。
そんな訳でロルフさんたちに行ってきますした僕は、バーリマンさんと一緒に錬金術ギルドの奥にあるっていう作業場へ。
そこでお水を汲む魔道具の作り方や、その魔道具がどうやってお水を汲んでるのかを教えてもらう事になったんだ。
「ねぇ、バーリマンさん。風の魔石でどうやってお水を汲むの?」
水の魔石がお水を動かすのとおんなじで、風の魔石は風って言うか空気を動かすでしょ?
そんなのを使ってどうやったらお水を汲めるのか解んなかった僕は、バーリマンさんに聞いてみたんだ。
「う〜、そうねぇ。口で説明するよりも、実際にやってみた方が解りやすいかしら?」
そしたらバーリマンさんは、僕に解りやすいように実験をやってみましょうって言って一本の太いわらとお水の入ったカップを持ってきたんだ。
「ねぇ、ルディーン君。これでカップの中のお水を飲んでみてくれるかな?」
「お水飲むの? うん、いいよ」
何でそんな事するのか解んないけど、お水飲むだけだったら簡単だもん。
僕はバーリマンさんに言われた通りカップの中にわらの方っ側を入れて、その反対側からちゅーってお水を飲んだんだ。
そしたらね、それを見たバーリマンさんは、
「ルディーン君。今君がやったのと同じような事をするのが、風の魔石を使った水を汲み出す魔道具なのよ」
にっこり笑いながら、そう教えてくれたんだよ。
でもさ、そんなこと言われても全然解んないよね。
「僕、お水飲んだだけだよ? 風の魔力なんて使ってないのに、なんでおんなじなの?」
「ええ、確かに魔力は使ってないわよ。でも、ルディーン君。今お水を飲む時に、藁をくわえて吸ったでしょ? それってお水を汲み上げたのと同じ事だと思わない?」
「あっ、そっか! カップの中からお水を吸ったもんね」
カップと井戸って考えたら、僕がやったのはお水を汲み出したのとおんなじだ。
って事はさ、バーリマンさんが教えてくれる魔道具って、僕がお口で吸ったのとおんなじように井戸に入れた管をちゅーって吸う魔道具なんだね。
そう思った僕はバーリマンさんにその事をお話ししてみたんだけど、そしたらちょっと違うんだよって言われちゃった。
「え〜、なんで? さっきはおんなじって言ったじゃないか」
「それはね、口で吸うのと最初は空気が入ってくるけど、その後にお水が入ってくるわよね?」
「うん」
「でも、それだと風ではなく水の魔石じゃないと動かせなくなるんじゃないかな?」
「あっ!」
そう言えばそっか。
お水を吸って、それが上まで来たらもう風の魔石じゃ動かせなくなっちゃうよね。
「ここで問題。さっきルディーン君はお水を吸った後に、何をしたでしょう?」
「お水を吸った後?」
バーリマンさんに言われて、僕は何をしたっけなぁって考えたんだ。
そしたらさ、すぐに答えが解ったんだよ。
「そっか。お水を飲んだんだ!」
「正解。今から作る魔道具はね、水を吸ってからそれを飲み込む、それと同じような事をする魔道具なのよ」
今から作ろうって思ってる魔道具はね、井戸ん中に入れた管の中の空気を風の魔力で吸いだす事でお水を持ち上げて、お水が上まできたら今度は反対に空気を入れる事でお水を汲み出すんだって。
「でもさ、それだとお水は井戸の中に戻っちゃうんじゃないかなぁ?」
「ふふふっ。そこはね、そうならないように工夫したのがこの魔道具なのよ」
バーリマンさんはね、今度は銅でできた何かの部品を出してきたんだ。
これって、魔道具を作る材料なのかな?
それを見た僕はそう思いながら見てたんだけど、そしたらバーリマンさんがそのうちの一個を手に取ってこれが何か説明してくれたんだよね。
「後で完成品を作る時は組み立てたものを使うけど、ルディーン君はお家に帰ってから作るって言っていたでしょ?」
「うん」
「ルディーン君はクリエイト魔法で金属の加工ができるから、中がどうなっているのか解りやすいようにバラバラの状態の物も用意してもらったのよ」
魔道具を作るだけだったら、出来上がってる本体に魔道回路図を書いてそこに魔石や魔道リキッドを入れるとこをつければできちゃうでしょ?
でも最初からそうやって作っちゃうと、もしお家の近くの井戸にも付けようと思っても本体の作り方が解んないからイーノックカウで買ってグランリルまで持ってかないとダメだよね。
だからそうしなくってもいいようにって、バーリマンさんはわざわざこんな状態のも一緒に用意してくれたんだってさ。
「それじゃあ、中の仕組みを説明していくわよ。この魔道具はね、一本の通路に片方にしか開かない二つの扉を付けたようなものと考えると解りやすいわ」
「二つの扉?」
「ええ。一つ目の扉を押して開けて通ったとするわね? そのドアを閉めた後、押したらどうなると思う?」
僕ね、これがお水を汲み出す魔道具と何の関係があるのか全然解んなかったんだよね。
でも聞かれたから、とりあえず思った通りの事を答えてみたんだ。
「押して入ってきたんだから、こっちから押しても開かないと思うよ」
「ええ、そうね。じゃあ、反対っ側の扉はどう? 押したら開くかしら?」
「おんなじ扉だったら開くと思う」
「そう。扉と扉の間にいる場合、片方は押しても開かないけど、もう片方は簡単に開いてしまうのよ」
バーリマンさんはそう言うとね、部品の中から出口が3つある筒を手に取って、僕に見せてくれたんだ。
「ほら見て、こことここの出口に片方にしか開かない蓋がついてるでしょ?」
「あっ、ほんとだ」
「これがさっき言った一方通行の扉なのよ。そしてもう一つの出口は風の通り道ね」
バーリマンさんはね、入ってくる方が開く蓋の方からお水を入れて、筒の中にお水がたまったら反対っ側にお水を出すんだよって僕に教えてくれたんだ。
「こういう構造なら、もう一つの口から空気を入れたり出したりするだけでお水を吸いだす事ができるでしょ?」
これは僕に見せるために作ったもんだからただの筒だけど、ほんとはお水が入るとこを作って、それに3つの穴を開けるんだって。
そしたらいっぺんにいっぱいお水を汲み出すことができるもんね。
「そっか。これ考えた人、すっごく頭いいね」
「簡単な作りではあるけど、思いつけるかと言われたら私には無理ですもの。すごい発明ですわ」
バーリマンさんはそう言うと、残りの部品をちっちゃな四角い模型をパッパッパッて組み上げて他んとこがどんな風にできてるのかを教えてくれたんだよ?
でもね、出来上がったもんはあんまり参考にならないんだよって笑うんだ。
「実を言うと、さっき説明した構造さえしっかり作ってあれば、他はどんな風に作ってもそれほど支障は無いの」
「そうなの?」
「ええ。その証拠に」
バーリマンさんはそう言うと、お部屋のふちの方に置いてあった台車をガラガラ押して来て、その上に載ってるものにかかってた布を取って見せてくれたんだ。
「ほら。これがルディーン君の館の井戸につける魔道具なんだけど、さっきの模型とは全然違うでしょ?」
「あっ、ほんとだ!」
バーリマンさんが持ってきた魔道具の本体を見た僕は、それが前の世界にあった消火栓ってのにそっくりだったもんだからびっくりしたんだ。
水を汲み上げる魔道具、最初は灯油などを入れるビニールポンプのようなものにしようかと思ってたんですよ。
あれなら気圧を変えるだけで水量調節までできますからね。
でもよくよく考えたらこの世界って、魔法があるおかげで科学的知識はあまりないって言う設定なんですよ。
それなのに気圧を取り入れるのはちょっとおかしいかなぁ? と思って、ストローで水を飲む時のように吸ったものを飲み込む(外に出す)と言う、ちょっと面倒なものにしました。
中に使われている弁だけなら本編でバーリマンさんが言っている通り一方通行のドアのようなものだから、科学的知識が殆どない世界にあってもあまり不自然ではないですからね。